循環器内科

高血圧

高血圧は生活習慣病の中で一番多い病気で日本では推計約4300 万人いると言われています。その中でも未治療のままで過ごしている人が44%もいると推計されています。
高血圧はほとんど症状がないことから、サイレントキラーと呼ばれ、静かにゆっくりと忍び寄り、そしてある日突然心臓病や脳卒中などを引き起こし、ひどい場合は死に至らしめる病気です。

日本には高血圧に気付かず放置して過ごしている方が多くおられるため、今回は高血圧の予防と治療についてお話しいたします。

血圧とは

心臓から送り出された血液が血管(動脈)の壁に与える圧力です。
血圧には上と下がありますが、上の血圧は、心臓が収縮して全身に血液を押し出した時の血圧で収縮期血圧といいます。
下の血圧は心臓が拡張した時の血圧で拡張期血圧といいます。

高血圧の目安

病院や健診などで測定した血圧が140/90mmHg以上、家庭で測定する血圧が135/85mmHg 以上の場合に高血圧と診断されます。
血圧は、1日2度(朝と夜)に測定をしましょう。
朝は起床して1時間以内食事前、夜は就寝前に測定します。
平常の自分の血圧を知り、毎日の健康管理をすることが理想です。

高血圧の原因

高血圧はその95% 以上が原因不明で、これを「本態性高血圧」と呼びます。多くは遺伝的な素因と塩分や脂質の過剰摂取、肥満、喫煙、過度の飲酒、ストレス、運動不足、加齢などの要因が加わって発病すると考えられています。
一方、検査により明らかな原因が見つかる高血圧もあります。腎臓病や内分泌(ホルモン)の病気などが関係する高血圧です。これらは「2 次性高血圧」と呼ばれ、本態性高血圧とは異なり手術などの治療により治癒させることもできる高血圧です。
日本にはお味噌、お醤油、お漬け物など、塩分の多い食文化があります。塩分過多は血圧を高くすることが多くの研究から証明されています。日本人の塩分摂取量は、以前と比べると減ってきていますが、令和元年(2019 年)厚生労働省が行っている国民健康・栄養調査では国民1 人1 日当たりの食塩摂取量は平均10.1g(男性10.9g、女性9.3g)という結果が公表されました。1 日当たりの食塩摂取量の目標値は、日本人の食事摂取基準2020 年版で男性7.5g 未満、女性6.5g未満、高血圧の方は6.0g 未満としています。2012 年に発表された世界保健機関(WHO)のナトリウム摂取量に関するガイドラインでは一般成人の食塩摂取量を5.0g/ 日未満にすべきとされているため、まだまだ塩分摂取量を控えるための推進が必要です。

高血圧の治療

高血圧の治療には、生活習慣の改善と薬物療法があります。

 

生活習慣の改善

高血圧の多くは生活習慣が大きくかかわっています。
肥満や運動不足、塩分の摂りすぎ、喫煙などが高血圧の一因となっています。生活習慣を見直してみましょう。

 

減塩を心がけよう

個人差はありますが、減塩をすれば血圧は下がります。減塩しても酢や柑橘類の酸味・香辛料・香味野菜を上手に取り入れると美味しく食べられます。

 

食品の塩分表示を確認しよう

普段よく食べる食品の塩分を意識すると自分の摂取している塩分量がわかってきます。

 

野菜・果物を食べよう

野菜・果物には血圧を下げるカリウムという栄養素が多く含まれています。
ただし、糖尿病や腎臓病など、医療機関を受診している方は主治医にご相談ください。

 

肥りすぎに注意しよう

肥満が高血圧の一因となります。
BMI は25 以内
 BMI ⇒体重(kg)÷(身長(m) ×身長(m))

 

適度な運動をしよう

有酸素運動は、血圧の低下に効果があります。

 

節酒をしよう

日々の飲酒量が多いほど、血圧の平均値が上がります。
飲酒はほどほどに。

 

禁煙をしよう

たばこは血圧を上げるだけでなく、脳卒中や心臓病の危険性、がんやCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の危険性を高めます。

 

薬物療法

生活習慣を改善しても効果が見られない場合は、血圧を下げる薬を飲んで血圧をコントロールします。

高血圧治療薬の種類には、大きく分けて三つのタイプがあります。
血管を広げる薬と、心臓の過剰な働きを抑える薬、余分な水分や塩分を排出する薬です。

患者さんの状態を観察しながら組み合わせを調整していきます。

タイプ 薬の種類 作 用
血管を広げる薬 カルシウム拮抗薬 冠動脈や末梢血管拡張作用
余分な水分や塩分を排出する薬 利尿剤 尿の量を増やす事で循環血液量を減らす
心臓の過剰な働きを抑える薬 α、β遮断薬 心筋や血管に交感神経の興奮が伝わらないようにする


高血圧は自覚症状がほとんどなく、自分では気づかないことが多い病気です。

他の病気の治療の際に自分が高血圧だったと知ることも多々あります。

もっと早く知っておけば…とならないよう、日頃から血圧測定を行いご自分の身体に耳を傾けてみてください。

日常で血圧が上下する原因はたくさんあります。もしかして高血圧かも?という場合は放置せず、お気軽に内科外来へご相談ください。

【参考文献】
高血圧治療ガイドライン2019 年版
厚生労働省:国民健康・栄養調査結果、健康日本21(第二次)
日本人の食事摂取基準(2020 年版)

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